目指すもの

大豆を食生活に取り入れて健康に

私たちが活動しているバングラデシュ農村部のシャシャ郡には、経済的に貧困家庭が多く、相次ぐ物価高騰もあり、十分に食事を摂れていない状況があります。卵、肉や魚などは高価で買うこともできず、健康に必要なたんぱく質摂取ができていません。食事は油を多く使い味付けの濃いトルカリ(おかず)でご飯を食べるという栄養的にも偏った食生活で、近年では心臓疾患や糖尿病、がんなどで命を落とす人や、高血圧・肥満などの生活習慣病に罹患する人が多く見受けられるようになりました。子どもたちも気軽に買えるスナック菓子を頻繁に食べ、食事替わりにすることもあり、成長期の発育に悪影響が懸念される状況です。

そこで当会は、安価で豊富なタンパク質を含み、様々な栄養素に富んでいて、生活習慣病予防にも効果ある大豆を、日常の食生活に取り入れるよう、設立当初から普及活動に取り組んできました。従来、現地では大豆は油を搾ったり、家畜飼料用と考えられ、食習慣に馴染めないものでした。村を巡回して大豆の栄養指導や調理講習をしても、その場限りで終わってしまい、食事に取り入れ根付くまでには長い年月が必要でしたが、地道な活動を続けることにより、今では大豆の栄養や効果も理解され始め、健康意識への高まりとともに、徐々に大豆を取入れることに抵抗がなくなってきました。

 

2020年3月発生したコロナ禍では、現地もロックダウンが続き、学校も同年3月17日以降、2021年9月11日まで全国一斉休校措置が取られました。その間、当会は子どもたちの栄養調査を行い、栄養不足を補うために、毎週大豆粉100gパックと大豆ビスケットを児童の家庭に配布しました。栄養価が高いことを知っている母親たちは、調理に大豆粉を入れて残すことなく使い切っています。

 

当会は、地元の農家に働きかけ大豆栽培を行い、学校の児童に大豆入り学校給食を提供し、地域の人々に大豆加工食品の製造販売をしています。そしてスタッフは、継続して学校やNGO事務所、行政機関などに出向いて、大豆の栄養価や調理法、値段の比較などについて、分かり易く説明しています。地域のより多くの人たちが栄養や健康的な食生活に関心を持ち、例えば、話を聞いた子どもたちが家に帰り、「大豆の栄養の話を聞いたよ。体にとてもいいんだって」と伝え、それが水の波紋のようにシャシャ郡全域に拡がることを目指しています。

大豆粉を児童の母親に渡すJBCEAスタッフ

大豆粉を青菜炒めに入れて調理する母親

小学校で大豆のお話を聞く児童


地産地消で大豆をシャシャに広める

■大豆栽培

 

1984年シャシャで活動していた青年海外協力隊員が、大豆を栄養改善に役立てようと地域の農民に大豆栽培を呼びかけ始めたことが最初の一歩でした。しかし、食習慣の違いなどから大豆を食用として広げることが難しく、定着に至りませんでした。当会はあきらめずに大豆の栄養指導や調理講習を続けながら、住民たちの意識の変化を見守り、何とか大豆を地域の人たちの健康作りに役立てたいと、大豆栽培を再開。その後、予め興味や意欲ある農家を大豆生産契約農家として選び、生産計画をたて、農家にしてもらうことを説明したうえで、種子を配付し定期的に栽培指導を行い、生産できたものをJBCEAバングラデシュが買い取っています。 

最近は、スタッフが行っていた定期的巡回指導に代わり、大豆栽培経験を持つ地域の篤農家が、他の栽培農家の指導を引き受けるなど、いろいろ協力してくれています。

大豆をライン植えで栽培し、周囲に見てもらう

大豆畑で草取りをする篤農家、栽培指導に協力


給食の野菜炊き込みご飯の仕上げに大豆粉を入れる調理員

人々の憩いの場、バザールの茶店で委託販売

(中央にぶら下がっているのが大豆入りパン)

■大豆加工食品生産

 

大豆加工食品生産は、2010年学校給食開始のときにJBCEAバングラデシュの大豆加工室で生産した大豆粉を供給することから始まりました。大豆の持つ栄養を地域の人たちの健康作りに役立てたい、大豆加工食品を食べてほしいという思いから、政府の食品販売許可証を取得し、地域の人々の憩いの場になっている茶店への委託販売を始めました。そして同時に、加工室の備品を整え配置を工夫し、衛生的に効率よく生産できるように整備しました。きちんとした身支度、加工場の清掃、整理整頓、器具の洗浄等に常に気を配るなど、衛生的な生産環境は地域のモデルにもなっていて、働くスタッフたちの誇りでもあります。

コロナ感染時期には、現地の保健衛生局が定期的に来て加工室の衛生状態のチェックを実施し、毎回「問題なし」と高評価を得ています。また、住民たちがコロナで村から出られない時期には、当局の許可のもと、荷台付きモーター自転車で村々を巡回販売、個別訪問して、住民たちを助けることができ喜ばれました。

また、郡役所から毎年、祭りごとや記念日に大量の大豆ドーナツやビスケットの特別注文を受注します。そのための増産体制もスタッフたちが効率の良い手順や方法を考え、日頃のチームワークを生かし、労働時間も長くならないように配慮して、できるだけ短時間で終えられるようになりました。このようにして得た達成感は、スタッフたちの自信に繋がっています。

 

主な大豆加工食品: 大豆ダル、大豆入りビスケット、大豆入りケーキ、大豆入りパン、大豆入り揚げパン


大豆入りケーキ
大豆入りケーキ
大豆入りビスケット
大豆入りビスケット
人気が高い大豆入り丸パン
人気が高い大豆入り丸パン
大豆入りビスケットのパック
大豆入りビスケットのパック
ふわふわの大豆入りパン
ふわふわの大豆入りパン
新商品の大豆入り食パン
新商品の大豆入り食パン

ベーカーの二人、手際よくパンを生産していく
ベーカーの二人、手際よくパンを生産していく
朝のスタッフミーティング
朝のスタッフミーティング
コロナ感染予防をして村で販売
コロナ感染予防をして村で販売
荷台にパン屋ケーキを積んで村に出発
荷台にパン屋ケーキを積んで村に出発

 これから

「1日1食バランスのよい食事を食べる学校給食」に大豆を供給することは、子どもたちの健康を守る大切な活動であり、今後も続けていきます。また、諸物価高騰の中、地域の人々に美味しく栄養豊富な大豆加工食品を、手ごろな値段で届けるのは簡単なことではありませんが、新たな販売先を開拓するなどの努力を行い、継続して大豆食品づくりに取り組んでいきます。

今後もスタッフで工夫を重ね、日本からも大豆に関する新しい情報を得て、誰にでも「JBCEAのソイ(大豆)入り商品だよ。」と勧められる、美味しくて健康に良い商品開発をしていきます。